駅弁の思い出
コロナ禍も3年目に突入。
以前に比べ、仕事で外出することは増えてきたものの、まだまだオンラインが主流の毎日です。
遠方への取材も無くなって久しく、今後復活もするのかどうか。誰でもいつでもどこへでも、出かけられる日常に早く戻りたいものです。
そんな想いを紛らわし、少しだけでも旅行気分を味わいたいと、「元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」に出かけてきました。
全国選りすぐりの駅弁が、デパートの催事場で一堂に会す、駅弁好きにはたまらないイベント。
今は、あちこちで同じようなイベントがあるし、東京駅に行けば各地のお弁当が買えるので珍しくもないのですが、チラシを眺めながら、今年は何を食べようかと考えるのが、毎年、我が家の楽しみになっております。
駅弁は子どもの頃から好きで、旅行に出かける時は、どこで何を食べるかも楽しみの一つ(電車の旅が好きというのもある)。思い出に残る弁当はいくつもあります。
そのひとつが高崎の「だるま弁当」。盆暮れに父の実家(新潟)に帰省する際、車内で食べていた思い出の味です。
まだ新幹線が通ってなく、新潟まで上野駅から特急で片道4時間かけて出かけていた頃の話。
当時、駅弁はそこの駅にしか売っていなかったので、お目当ての駅に着くと窓から顔を出したり、売店へ走るというのが普通の光景でした。
「だるま弁当」が買えるのは高崎駅。駅が近づくと、父が出口に向かい、ドアが開いたと同時に売店へダッシュ。発車前に弁当を下げて戻ってくるのも恒例行事になっていました。
ある年の年末のこと。帰省ラッシュで車内はギュウギュウ、高崎駅に着いても父が無事にホームに出られたのかも見えないぐらい混雑ぶり。大丈夫かと思っているうちにベルが鳴り、父が戻る前に電車が発車!
乗り遅れた!どうしようと泣きそうなくらい心配でドキドキしていると、弁当を手に通路を歩いてくる父の姿が…。今でもハラハラした思い出がよみがえるお弁当です。
ちなみに、味もバツグン。真っ赤なだるまさんの蓋を開けると、ごはんの上に並ぶ山菜、しいたけ、鶏肉、ごぼうなど、丁寧に味付けされた具材はどれもおいしく、最後に栗の甘露煮を食べるのがお楽しみ。ピリッと辛いナスの漬物もいつしか食べられるようになりました。
さて、駅弁大会。今年、我が家が選んだのは「鯵の押し寿司」(小田原)、「えんがわサーモンいくら」(新潟)、「みそかつ」(名古屋)。
どれもおいしく満足でした。
ところで、駅弁はおかずも大事ですが、それ以上に「ごはん」のおいしさが重要だと思っております。
これまでいろんな駅弁を食べてきましたが、一番食べたのは、出かける機会が多い新潟のもの。そして、食べるたびに思うのは、新潟の駅弁は「ごはん」がおいしい。ひいきめ? でも、新潟の駅弁はどれも「ごはん」がおいしいんです。そう思うのは私だけなのでしょうか。
今年こそ、仕事や旅行で電車に揺られながら駅弁を楽しみたいものです。
ライティング
神奈川県出身。
業界紙の編集を経てフリーに。地域情報サイトで取材の経験を積み、現在は、中川政七商店サイト「さんち〜工芸と探訪〜」、朝日新聞社サイト「好書好日」などで執筆中。
映画と散歩が趣味。最近は子どもと一緒に観られる作品も増え、映画の見方にも変化が出てきたのがうれしい。いつか「まち歩き」や「映画」に関する執筆をするべく、日々、ネタ集めをしている。